2009年 04月 20日

ミスター・ハンソン #2

d0114818_1239949.jpg ショーレストランの舞台監督から事務所に電話があり、直ぐ来てくれと言う。自分の子供が差別されたと言って、やくざっぽいお客が怒っているそうだ。その日はハンソンが当番で、キモサベは帰り支度をしているところだったが、電話口で泣き出しそうな舞台監督にすぐ行くと言って事務所をでた。電話の様子から内容を察知した上司は急にそそくさと仕事を始めた。

 そのレストランのショーには客の子供をステージあげて踊らせる場面がある。子供が多い場合はステージの下で踊らせることになる。どうやら怖いお父さんの子供はステージに上がれなかったようだ。どうしたものかと考えながら急いだ。やくざじゃどうもこうもないかも知れない。

 レストランの待合室にそのお父さんと舞台監督、そしてなんとハンソンが立ったまま話している。お客は見るからに、、と言う感じ、ポイというよりそのもの。だが近づくと様子がおかしい。

 「お客さんねえ子供だってねえ、お父さんが怒鳴りまくってりゃ楽しくないよ、悲しいですよ、奥さんだって人前ではずかしそうでしたよ」
 ハンソンが切々と話している。客は坊主頭をうなだれ、時々小さな声で「はい」と応えている。
 「あとねえ、お客さんねえ、この子だって仕事だから怒られるのはしょうがないけど、手あげられちゃ困っちゃうんだよね、嫁入り前ですよ、悪いけど、、お客さんの世界だって女性にそう言うことしないでしょ、おおごとにはしませんから誤って下さいよ、悪いけど」
 男は金ぴかのロレックスをした手をミサンガをした反対の手に重ね「済みませんでした」と舞台監督にむかって頭を下げた。

 それで話は終わり、ハンソンはその客を席へおくって行った。フロアに出るとハンソンはそれまでピンと伸びていた背筋をまるめ、ヘコヘコした感じで男の後ろを歩いた。そして家族のところまで行くと腰を90度曲げ深く頭を下げている。

 「で、どうなっちゃたの」舞台監督に尋ねると「わたしも分らないんですけどォ、キモサベさんに電話して戻ってきたらハンソンさんがいてェ、そしたらお客さんもう怒ってなくてェ、そしたらキモサベさんきてェ」うん、わからん。

 いつものようにおどけた様子で舞台裏に戻ってきたハンソンに「どうやって黙らせたの」とたずねると「いえいえ黙らせるも何も、勝手に黙っちゃたんですよ、いやほんとに、わるいけど」と煙に巻かれた。そして未だに真相は教えてくれない。
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by kemosabee | 2009-04-20 12:39 | あばら屋暮らし


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