2008年 08月 07日

父の辞書

 実家をたずねると、母が父の遺品の辞書を虫干しにしていました。ここにも紅葉の葉が何枚もありました。

 父は死ぬまで勉強家でした。居間におかれた父の椅子の傍らには、古い回転式の書架があり、数十冊の辞書が納められていました。岩波、オクスフォード、ラルース、、どれも現役でボロボロです。
 キモサベが子供の頃、父になにかをたずねると、直接こたえず「辞書をひけ、辞書を」と適切な一冊を差し出しながら言いました。
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 亡くなる半月程前、父の親友が見舞ってくれました。父はベッドから起き、きちんと椅子に座り友を迎えました。楽しい話が続き、話題がイギリスのことになりました。そこにいた全員が思い出せない地名があり、皆、頭を抱えてしまいました。
 それまで黙って話を聞いていた父は、傍らから、でかい辞書を取り出しました。A3くらいの大きさで厚さ10センチはあろうかと思われる辞書です。ひょいと持ち上げ孫娘に黙って手渡しました。
 そのころすでに父は極端に食が細り、腕も足も骨の形が分かる程痩せていました。孫娘が両手でやっとのこと受け取った重たい、重たい辞書、、細い,細い父の腕、、。への字に閉じられた口が「辞書をひけ、辞書を」と言っているようでした。ブログランキング・にほんブログ村へ
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by kemosabee | 2008-08-07 11:49 | あばら屋暮らし


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