2011年 08月 11日

プライド ジョーイ翁

 キモサベが初めてジョーイを見たとき、とは言ってもほんの1年前のことですが、

翁は既に光を失い、下肢の動きはおぼつかなく、少しの移動も難儀そうでした。

それでもたいした不自由もなさそうに、家の中を気ままに歩いていました。

 翁が見えないはずのドアの隙間を、それ以外に無い導線を迷わず辿って部屋に

入ってくると飲み食いに興じていた人間達も一瞬フォークとグラスを置き、夢中に

なっていた話題を中断し彼に注目しました。キモサベは事前にジョーイ翁のことを

聞かされていた訳ではありませんでしたし、ジョーイ翁も決して威圧的な態度を

とる訳ではなく、むしろ控えめな様子で「御免なすって、そのままそのまま」と

登場するのですが、キモサベは座ってはいたものの直立不動の状態でした。それは

ジョーイ翁の威厳がそうさせたのだと思います。。同じ屋根の下に暮らす犬達も

決して、間違っても彼の邪魔はしません。ジョーイは人とか犬とか、そういう分類を

超越した存在だったのだと思います。

 我々夫婦がジョーイ翁の暮らす田幸家に五回目の訪問をした今回、翁の様子は

それまでと違っていました。やせ衰え、力なく、、キモサベには生命と言うより、

なにか透明な存在にうつりました。横たわっている彼は寝息もたてず、あばらの

浮いた胸の動きに少し遅れてプワッと膨らむ唇の音が、耳を澄ませば聴こえる程度

でした。そんな状態でも彼の放つ威厳は少しも変わらず、研ぎすまされたように

さえ見えました。キモサベはそんな翁を見ながら、召される合図をしたのかしらん、

と思ってしまいました。と、その時、翁はむっくり身体を起こし、自由の利かない

後ろ足を無理矢理伸ばし立ち上がりました。用を足したかったのです。心得た

飼い主が引き戸を開け彼を導きました。ここでいいよ、ジョーイ、デッキでしても

いいんだよと彼のアゴに手を添え語りかける飼い主、しかしジョーイは納得せず、

いつも小便をするコンクリートのたたきへ降ろせと催促します。彼の誇りに違い

ありません。呼吸をするのが精一杯のジョーイなのに、主人に告げるだけでも十分

なのに、立たなくったっていいのに、それなのに、、

 翌朝、ワイフがその部屋へ行き呼吸の止まったジョーイを見て、添い寝をして

いた主人を起こしました。彼女は間もまく訪れると知っていたその時を、それでも

やっぱり現実だと受け入れる事はできませんでした。ワイフでさえ、情の薄いキモ

サベでさえ打ちのめされた現実。。彼女にとって、ましてご母堂にとって、、。

 ジョーイ翁の大往生に偶然立ち会ったキモサベは父の死を思い出しました。

93歳の父は最期の日の前日まで小便を立ってしました。オムツを断固拒否し、

それなら座ってしてくれという母の言葉には耳をかさず。

 きっと父は最後の用を足したとき、「うーーん、もうきついな、やるこたあやった、

人生に悔い無し、はい、お迎えよろしくお願いします」」と思ったのでしょう。

 ジョーイ翁は「うーん、小便もちょっと難儀だし、爺ちゃんも『良いよ』って

言ってくれたし、、そろそろ行こうかな、礼子、めぐみ、ばあちゃん、ありがとう、

忘れないよ、じゃあな、おっとごめんごめん、たけし、君にはほんとに世話になったな、

最期の最後までありがと」っと旅立ったのではないかと。。。

 そういうあっさりとしてるけど高潔な最期。

 棺の中のジョーイ、ひまわりの花がよく似合っていました。

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by kemosabee | 2011-08-11 16:47


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